鴨川地球生活楽校4月レポート

鴨川地球生活楽校 4月レポート

2012年4/28(土)・29(日)に鴨川地球生活楽校を開校した。

鴨川に移住して13年が経ち、いつかこういう「場」を創ろうと思っていたがいよいよそれが実現した。それは東日本大震災と福島原発事故が起きた今だからこそ、僕が求めていたことと社会が求めていたことがピッタリと重なったのだろう。

アメリカ、アジア、ヨーロッパを旅した僕はこの日本の里山及び農村文化の素晴らしさに目覚め、鴨川に移り住み1999年から農的生活を始めた。そして村の長老たちの暮らしの技術や地域コミュニティを愛する心に感銘を受け、この里山文化は世界に誇るものであると思うように至ったが、かといって僕らはもう昔の暮しに戻ることは出来ない。そこで現代の持続可能な暮らしの総合デザインであるパーマカルチャーをこの里山文化に融合させた21世紀型地球市民生活を創造したいと思うようになった。今は世界中の素晴らしい知恵や文化を学べる時代なので、おいしいとこ取りをしようというのである。そして食、エネルギー、経済、コミュニティ、地域社会を自給・自立・循環させていく学びの場として、NPOうずの仲間たちと鴨川地球生活楽校を始めたのだ。美しい里山で楽しく学ぶ場となるように、楽校(がっこう)は「楽しく木と交わる」と書くとことにした。だから、この楽校は今までのように先生が上から教えるような上下関係の場ではなく、僕ら自身も対等に参加者と共に学び楽しみ成長する新しい創造空間なのだ。

講師のフィルや長老のきんざさんはフライヤーやwebで紹介したが、この場をお借りして鴨川地球生活楽校の運営をお手伝いして下さる素敵なスタッフたちも紹介したい。

まず事務局にはパートナーの菜穂とやっちゃん。

●菜穂は僕と同じ旅を続け、同じビジョンを見る魂のパートナーであり同志である。また地域通貨「安房マネー」とNPO法人うずの事務局長でもある彼女がいるからこそ、事務能力のない僕が今までやってこれた。僕がビジョンを語り、彼女がエンジンとなって船を進めて行く感じだ。

  • やっちゃんは女一人で田畑をやりながら「ロカヒ」の屋号でベジタリアン料理やオーガニックスイーツのケータリングを行い、またフラワーエッセンスやレイキヒーリングを処方するヒーラーであり、コミュニティカフェawanovaを美穂ちゃんと運営している。やっちゃんと菜穂とこの2人がいなければ今回の場は生まれなかった。女性性の時代にふさわしくこの2人が鴨川地球生活楽校の生みの親である。

●美穂ちゃんはやっちゃんとコミュニティカフェawanovaを運営し、川口式自然農を実践しながらマクロビオティックをベースにした雑穀料理の教室やケータリングをし、現在鴨川市の隣にある鋸南町の山中に地元素材の木材を使った自宅をセルフビルド中である。彼女は「ボサティー・ミホ」と仲間からは呼ばれているほど菩薩愛に満ちている。

●「ポレポレ農園」という屋号の岩田さんは農村ビジネスの開拓者である。農的生活でスモールビジネスを創造するというミッションを持って海外支援のコンサルタント会社を去年退社し、鴨川の里山で精力的に活動している。NPP(なす・ピーマン・プロジェクト)、そら豆プロジェクト、地大豆オーナー制など次々に立ち上げ、小さな農でいかにして食べて行けるか人生を掛けて実験中である。田舎暮らしで良く言われるテーマに、現金収入はどうするのかと言う問題がある。産業の無い田舎では仕事も少なく、勤め先はあまりないので必然的に移住者の多くは手に職系が多い。陶芸家、カメラマン、ライター、ミュージシャン、絵描き、草木染め等々、しかしみんながみんな手に職を持っている訳ではない。だからどんな田舎でも必要とされる職業である福祉、医療、教育、農林水産業、サービス業、観光業、建設業等に就職やバイトをするケースもある。

しかし、岩田さんはこの里山や農地を活かした持続可能な仕事づくりに挑戦している。そしてそれは奥さんの理解と協力があるからこそ自実現可能なのだ。奥さんは東京で2人のお子さんを育てながら早稲田ボランティアセンターで教師をし、アフリカの農村支援をライフワークとしている。奥さんが稼ぎ旦那が食べ物をつくり、東京と鴨川をお互い行ったり来たりをする2地域居住というライフスタイルだ。2人ともグローバル経済に飲み込まれるアフリカの農村の支援を通じて、先進国と言われる日本の地域社会が自立しなければいけないことを痛いほど知っているからこそ、このライフスタイルにチャレンジしているのである。

●ヒゲにロングヘアーで長身のたけちゃんは「虹の村のみかん屋たけちゃん」という屋号で、村の長老きんざさんからみかん畑をお借りしてオーガニック温州みかんを育てている。また、たけちゃんも里山での仕事づくりに燃えている一人だ。高齢化が進む里山の環境と福祉の問題を解決することでスモールビジネスを起こそうと仲間たちとネットワークし「里山生活お助け隊」という田舎の便利屋さんを始め、少しずつだが動き出している。

また、今年から始まる国の事業「青年就農給付金」にも応募しようと積極的に動いている。これは、農家の平均年齢が66才となった日本農業の危機に対して、若い農家を育てようと45才以下の新規就農者に年間150万円の給付金を最長5年間支給して、日本の農業を立て直そうという国の制度である。やっとこの国が「命の産業」である農業を守るために重い腰を上げ始めたのだ。しかしTPP参加への動きもあり、油断のならない緊迫した危機感を拭えない現状は変わらない。

農家になるためには、まずは地域の農業委員が認める農地を借りなければならない。鴨川市では5反の農地を借りなければならないのでたけちゃんは今、釜沼北集落でお借り出来る農地を集め、すでに3反位は集まって来ている。

●英語が堪能な帰国子女であるエリは半農半ベリーダンサーである。エリとパートナーのクリスは2001年の911事件をきっかけに意識のシフトが起こり、農村で持続可能なコミュニティで暮そうとアチコチを探した結果、鴨川に出会い原宿から鴨川の里山へ移住して来た。地元の長老たちともつながりながらもスピリチュアリティとアートと農を融合させたアジア型里山集落エコビレッジを創造することをビジュアライゼーションしている。クリスが瞑想的なネイティブフルートを吹き、エリが優雅に踊るその姿はまるで巫女のような神聖な美しさがある。

●亨さんは、グラフィックデザイナーでありカフェ草(そう)のオーナーシェフである。美しい棚田を望む里山にカフェ草はあり、そこで棚田を眺めながら頂くスパイシーな南インドカレーは絶品である。今回のセンスの良い鴨川地球生活楽校のフライヤーデザインは亨さんによるものである。

●カメラマンのヒロノちゃんは講座を撮影してくれ、グラフィックデザイナーのミツくんはビデオ撮影をしてくれている。ヒロノちゃんはドキッとするほど美しい写真を撮り、ミツくんは神秘的で美しいグラフィックアートを創造する素敵なアーティストカップルだ。

●初日の夕食を作ってくれたいつも瞳がキラキラと輝いているみなちゃんは「もみじの手」という屋号で、マクロビオティックをベースにした雑穀料理のケータリングや出店をしている。木こりをしているパートナーのあきらくんとお子さんと3人で里山の麓にある市営住宅に暮らしている。

こんな素敵なスタッフ達と交流するのも地球生活楽校の魅力的なところだ。僕らはスタッフであり、生徒であり、共に学び、共に場を創造する仲間でもある。

さらに今回集まった20名の受講生達も実に魅力的な人たちだ。そして彼、彼女らはこれからより自然と調和したライフスタイルへシフトしようと、より持続可能な社会を創造しようと、またそのヒントを見つけようと動き出した21世紀という大変革期の冒険者たちでもある。

福祉関係、IT関係、IT会社の経営者、市役所職員は2人も(!)、畜産の県職員、デパ地下で野菜中心のお惣菜を作る青年、事務職員、ジャズシンガー、農業関係、教育関係、出版関係、早期退職した自由人、裸足のランナー等々、世代を越えて多種多様な職業の多彩な人々が集まった。ご縁あって出会った方々とこの1年間、密度の濃い時空を共に旅することになる。それはきっと思いがけないポジティブな化学反応が起こるだろう、とても楽しみだ。

自己紹介の後、4つの班に分かれ各班に名前を付けてもらった。

1班「チーム パー」、2班「たまとかげ」、3班「つちくら」、4班「スローペチカ」

フィルの講義ではパーマカルチャーの歴史、現代的意味、倫理などを話した。1960年代オーストラリアで市民運動をしていたビル・モリソンは反対するだけの運動は疲れるし社会は変わらないと思い、自分の家から、そして玄関を一歩出た庭から、新しい社会を創造しようとパーマカルチャーを考案した。その発想の着眼点はアジアの農村だった。第2次世界大戦前、アメリカのキング博士が日本、韓国、中国を旅し「東亜4千年の農民」を出版し、その副題としてつけた言葉が「パーマネント・アグリカルチャー 」だった。ビルはその言葉にインスピレーションを受けて、パーマネント(永続)+アグリカルチャー(農業)+カルチャー(文化)を融合させパーマカルチャーという造語を創った。

そしてデビット・ホルムグレンと共同で70年代にパーマカルチャーを持続可能な暮らしの総合デザインとして体系化させ、81年から講義を始めた。元々アジアの農村にあった循環の文化を現代の科学的視点と地球規模の倫理観と時代認識を合わせ論理的に構築したその手法は、単なる田舎暮らしの農法ではなく、コミュニティ、地域社会、都市、国家にも応用することの出来る総合的な方法論なのである。ソ連崩壊後、石油の輸入がストップしたキューバはパーマカルチャーの手法を国家レベルで取り入れ都市農園を10年かけて作り国民の生命を救ったという、またトランジッションタウンという持続可能な街づくり運動、エコビレッジ等、地球規模の環境破壊が進む現在、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オセアニアと全世界で広がっている。

そして今では世界中の何百万人もの人がつながるパーマカルチャー・グローバル・ネットワークとなり、その有益な情報を共有している。

●パーマカルチャーの3つの倫理

1.地球への配慮

2.人への配慮

3.余剰物の分配

  • パーマカルチャーの5つの権利

水・空気・食・住・コミュニティこれら5つが健康で健全にすべての人に行き渡る権利がある。フィルの言葉では、おいしい、楽しい、友達いっぱい!である。

またパーマカルチャーには幾つもの重要なメッセージがある。

●「問題は解決である」

今ある問題は、答えを導くのだ。だから問題から逃げるのではなく問題に向かい、そこから答えを創造しよう。

  • 「よく考え、行動する。考えない行動ならしない方が良い。」

アメリカ先住民は7世代先のことを考えると言うように、現代人もその視点を持つべきである。放射能汚染をまき散らしてしまった僕たちの社会は、この言葉を心にとどめなくてはならないだろう。そしてパーマカルチャーの全世界のことを考えるという視点が、自然農や先住民文化と共通する点でもある。

  • 「一つのエレメントに多数の機能を持たせる。」

一石二鳥も三鳥にもなるように場を多機能にデザインする。

●「一つのことが全体とつながりを持ってデザインする。」

一つ一つが分断されず、つながり、循環するように考える。

●「すべてのものはつながっている。そしてすべてのものは死ぬ。」

●「最小のエネルギーで最大の効果を発揮する。」

これは、合気道や禅の思想と同じだ。

  • 「サスティナブルとは作るエネルギーより、発生するエネルギーの方が多い。」
  • 「バックアップシステムを用意する。」

311のような大災害が起きた時、僕らの社会は身にしみた。食、水、エネルギーの供給源が一つだと危険である。

  • 「多品種・多様性が安定をもたらし、豊かさを生む」

大量生産・大量消費の社会では単一の作物が栽培される。それは安定を失い、それを維持するためにエネルギーがかかってしまう。

  • 「すべての機能は多数のものに支えられている。そしてあらそわず協力し合っている。」

自然界は無駄なものは何ひとつ存在せずすべてが調和し大きな循環の和をカタチづくっている。

●「エネルギーの保管」

エネルギーは変換することは出来るが、生み出すことは出来ない。太陽がすべてのエネルギーの源である。そのエネルギーを如何に取り入れ循環させるかをデザインする。

●「知識・情報・技術を使ってみんなが幸福になるためにデザインする」

このみんなの幸福が個人と家族と地球全体の生態系なのだ。

そしてフィルは「パーマカルチャーとはパンクで自由なんだ!」と熱く語ってくれた。

そう、パーマカルチャーの原則や手法を用いて、それぞれの地域固有の文化や状況にあった持続可能なデザインを創造すればいい。だから、こうしなければいけないという決まりはない、自由なのだ。そして自然を破壊するコトでしか維持出来ない現代文明の社会システムから脱し、権力に屈することなく、人類のみならず地球上のあらゆる生命を守るための哲学でありデザインなのである。

●アクティビティ「観察」 観察→ビジョン→プランニング→実行

パーマカルチャーでは、まず始めに場を良く観察することの重要性を伝えている。

そこにどんな資源があるか。風、日光、水、雨量、土、動物、植物、鉱物、ゴミ、道、利用されていない廃棄物、におい、色、音、味覚、美、心地よさ、地形、寒暖、湿度等々あらゆる情報をマップに書き込む。出来たらそれは1年を掛けて情報収集するのが良い。

アジアの農村ではそれは何千年も掛けて、そこにある資源を最も有効に活かした持続可能な村をデザインして来た。しかしアジア人であるといっても現代文明に侵された僕らは、もう一度意識的にそれを学び直し理解する必要がある。

みんなで鴨川地球生活楽校のある古民家、ゲストハウス、納屋、レモンの木やみかんの木がある斜面、古道の入口、海の見えるお墓、里山などをぐるりと周り、それから各班に分かれてそれぞれの担当エリアを観察した。その後、土間に戻り各班ごとに発表し、観察したことを大きな白地図に記入してデータを分かち合いみんなでディスカッションをした。

初日の講義が終わり、保田の「ばんや」へ風呂を入りに行った。車中ではワイワイとおしゃべりしながら長狭街道を西へ向かい、西日に光る東京湾が車中から見えると、わーと歓声が上がった。なんだか大人の修学旅行のようだ。漁師町の漁協が経営する人気の風呂屋「ばんや」は、いつものようにけっこうにぎわっていた。みんなは里山と海がある房総半島の二つの顔を楽しんでいる様子。

風呂を出ると再び里山へ戻り、今回の宿泊所である「森の家」へ向かった。途中、村に唯一あるスーパー「寿しや」に寄って夜の交流会用にビール等を仕入れた。

森の家では、「もみじのて」の守井三奈子ちゃんがおいしい雑穀料理の夕食を用意してくれていた。そしてお腹をすかせた僕らは、みなちゃんの美しい盛りつけの健康的な食事をおいしく頂いた。

食事の後は村の長老であり僕の百姓の師匠であるきんざさんにお話しして頂いた。

僕は今回の講座では村の長老たちの伝統的な里山文化を伝える時間をぜひ設けたかった。外国で生まれたデザインであるパーマカルチャーの受け売りを切り取ったように日本へ持って来てもそれは片手落ちだ。その手法と、元々あった日本の持続可能な里山文化と融合させ、さらに進化した21世紀型里山文化を創造しないと意味が無いと思ったからだ。

86才のきんざさんは、戦前の石油と電気の無い時代の自給自足の村の暮らしを知っている最後の世代である。棚田でお米をつくり、畑で野菜を育て、木を切り、炭を焼き、みかん園を管理し、わら細工、竹細工、小屋づくり、土木工事、お茶づくり、お祭りの笛となんでもこなし、しかも手仕事から生まれるわら細工は芸術的に美しく、まさに僕が尊敬する百の仕事が出来る本物の百姓なのである。そして日本の百姓は僕にとってオリジナルパーマカルチャーなのだ。現代社会では百姓は差別用語としてNHKでは放送禁止用語になっているそうだが、価値が逆転した僕らにとっては尊敬語である。これから「ヒャクショウ」は、「モッタイナイ」に続く世界に輸出される文化となるだろう。余談だが、友人の作家伯宮幸明(たかみやさちあき)さんが一昨年出版した小説「百姓レボリューション」はとてもリアルに311後の日本を予言している。311直前に出版された小説とは思えない程、ストーリーは現実と重なっている。

きんざさんの前に、僕が「種をつなぐ」というテーマで世界や日本の現状について話した。現在日本で栽培されている作物の90%以上がF1品種(1代交配種)となっている。F1品種の利点もあるが、そのほとんどが外国産であるため輸入に頼っている危険性をあわせ持っている。そして多国籍企業の種の支配やGM(遺伝子組み換え作物)の危険性について、さらにTPP参加の問題、自家採取や在来種専門の種苗会社の紹介などを話した。

その後、きんざさんには「地域で育て続けた種のお話」というテーマでお話して頂いた。

ほんの数十年前までは逆に90%以上の種は各農家が自家採取していたのが当たり前だった。そして種から派生する様々な農村文化のお話もして頂いた。田のクロに植えたヒエの実は牛の餌に、茎は穀物を干す時に使う「下敷き」という大きな敷物を編んだそうだ。また、どこの家もそばを植え、大晦日に家族で年越しそばを食べたという。種から育てた年に一度の年越しそばは特別なごちそうだったに違いない。他にも、綿を植え布団の自給をしていたり、モチアワも育て餅米と交ぜ黄色い餅を突いたそうだ。

集落には一軒「たねや」があり、そこから自家採取が難しい種だけを購入していた。現在では種すら大量生産、大量消費となってしまったが、一昔前は来年の家族の生活を支える大事な命の糧だったのだ。

そして、ビニールハウスや電熱育苗器がなかった時代は各家では毎年、畳一畳サイズの踏込み温床小屋を建てた。落葉、わら、ぬか、牛糞、人糞など周りにある有機物を集め、それを自然発酵させた熱で発芽を促進させた。

村の人格者であるきんざさんは、打てば響くようにニコニコとどんな質問にも答えてくれ、あっという間に夜の9時になってしまい講義を終了した。

その後はお待ちかねの乾杯だ。みんなさっき寿しやで買ったビールやおつまみを出して楽しく会話の花を咲かせた。しかし、みんな朝早く都会から出て来て疲れていたこともあり、あまり夜更かしもせずサクッと切り上げた。夜中の12時過ぎまで飲んでいたのは、地元から来ている花田さんと僕だけだった・・・。

翌朝、気持ちのよい天気で森の家は山のすがすがしい霊気に満ちていた。

鳥のさえずる中、僕はウッドデッキでともよさんとともくんと瞑想をした。瞑想は心に栄養を与える朝ごはんである。世界を調和させることは、目に見える物質世界だけを調和させてもそれは持続しない。目に見えない内面世界である精神の調和、すなわち心の平和も同時に実現しなければ真の意味でこの世界に持続可能な社会は訪れないであろう。この宇宙は物質次元の領域と精神次元の領域とが両方存在し、そしてお互いに関係し合いながら密接につながっているのだから。

驚いたことになおこさんは近くの天然酵母パン屋さん「かまどの火」を朝の散歩で見つけてパンを買ってきた。この森のなかでパンの匂いを嗅ぎ付けるとは、なおこさんとてもアンテナの高い人だ。

朝食はやっちゃんが用意してくれた。自分で育てた長狭米ごはん、自家製味噌のみそ汁、おからと野菜の煮物、大根とせりの和え物、梅干しとシンプルでパワフルな里山精進料理だ。

食事が終わると全員で布団の片付けと施設全体の清掃をした。そしてなんと来たときより、森の家は綺麗になったように思う。参加者がお客さんではなく、一つひとつの行為から、生活から学ぶことを通して精神の成長を誘っている。それが、義務ではなく自発的にそうなっていることがこの地球生活楽校の素晴らしいところだ。スタッフふくめ参加者全員の雰囲気がそういう場を創造しているのだろう。「生活が学びである」とは、世界中のオルタナティブ教育の共通した観点である。シュタイナー教育、サティシュ・クマールのスモールスクールやシューマッハカレッジ、自由学園、フィンドホーン共同体等々・・・。

朝食後、釜沼集落へ移動して二日目の講義「キッチンガーデン(食べられる庭づくり)」が始まった。

フィルの先生であるビル・モリソンの一番弟子ジェフ・ロートンによると「庭をつくることで世界を変えられる」、そして「すべての人間の問題は庭で解決出来る」と言う。この「食べられる庭」とは、とても深い現代的意味を含んでいると思う。仏教や禅で庭は精神性をあらわし、心を鍛錬する場であり、美を表現する場でもあり、ユングの箱庭療法のように魂を癒す場でもある。そして、そこに「食」と「循環」をMIXさせることが、僕は21世紀的であると思う。

そしてガーデンでは耕さず、多品種の植物を育てると同時に「土」を育て、庭で森の多様性を再現するのだ。これも自然農と共通していて、パーマカルチャーは東洋思想ととてもリンクしている。

●ゾーニング

パーマカルチャーではゾーニングという考えがある。日本の里山に当てはめるとこんな感じだろう。

ゾーン0 家

ゾーン1 キッチンガーデン(食べられる庭)

調理中にツッカケ履いて収穫できるくらい台所から一番近い畑であり、料理にすぐ使えるハーブや野菜など。

ゾーン2 週1〜2回行く畑

じゃがいも、タマネギ、人参、にんにく、大根、里芋など根菜類の畑。

ゾーン3 田んぼや穀物畑

米、麦、雑穀、大豆、

ゾーン4 里山

薪、炭材、竹、建築材、山菜、きのこ、つる

ゾーン5 奥山・自然界

猪、鹿、猿、森の精霊など獣と神の領域

●アクティビティ「キッチンガーデンづくり」

地域にある資源を活かし「玄関ハーブガーデン」と「サラダバー ガーデン」を作る。

竹割り班とガーデン作り班に分かれて作業をする。

友人のブラジル人のヘジナウドさんが冬の間に伐採してあった真竹と同じく近所の人が冬に伐採してあった孟宗竹をもらって来て、どちらも処理にこまっていた資源を利用することにした。約45センチに切った竹を半割にして、節を取り除いて交互に合わせガーデンの柵に使った。

シートマルチングという手法をつかいガーデンづくりに取りかかった。まずバンブーガーデンの底に石灰と鶏糞を撒いて水をまきミミズや微生物を土中から誘い、その上に濡らした段ボールを敷き詰めた。さらに裏の台所排水が流れる側溝からイトミミズがわんさかいる発酵した泥をすくって来て段ボールの上に乗せた。我が家の洗剤を使わない台所排水をキッチンガーデンに入れ、そこで作物をつくり、その作物を食べ、それを調理する時に出た排水をまたキッチンガーデンへ入れるという小さな循環を庭でつくる。

台所排水の泥の上に籾殻を乗せ、そこに米ぬかと鶏糞をもみの1/3ほど入れ良く混ぜ合わせ、最後にカットした稲藁をたっぷり入れた。そしてたっぷりの水を掛け、これでガーデンベッドの出来上がりだ。大山地域の固い粘度土を耕して畑にするのではなく、地域にある不要になった有機資源を集め有効利用して、小さな森の生態系を再現するのである。

そこにフィルがオーガニックで丹誠込めて育てた在来種の苗が植えられた。ピチピチの美しい苗たちは素晴らしいミミズコンポストと籾を混ぜた栄養たっぷりの土と一緒にキッチンガーデンに配置されていった。まずわらに穴を開け、底の段ボールを破き、その穴にミミズコンポストを入れ、苗を植える。それはまるで子供が絵を描くように、何も考えず無心に笑いながら。こんなに楽しい畑づくりは経験したコトがない。

僕らは里山に抱かれた古民家というキャンバスにみんなでワイワイと楽しみながら食べられる庭をアートした。そしてとても愛おしい素敵な庭が出来た!

庭から世界が変わるという言葉を思い出した。

とにかく、とても楽しい二日間だった。

311を経験した日本人がこれからどこへ向かうのかは、僕たち一人ひとりにかかっている。今回集まった参加者の多くは311を機に自分も出来ることを、「今ここ」から始めようと直観した人達だ。

そう、キリストやブッタ、ゲバラやガンジーのようなカリスマや英雄が現れ、新しい社会を創ってくれるのではない。僕らの時代は一人ひとりの市民が動くことで、小さな輪が出来、その小さな輪が同じ方向を向いている小さな輪とつながって行き、やがてそれが大きな面となり、その面がネットワークして地域に広がり、国を超え地球を覆い、そして世界を変えていく。21世紀はカリスマや英雄を待つ時代でない。勇気あるカリスマや英雄は僕たち一人ひとりの心の中にいる。世界の主役は一人ひとりの市民なのだ。一人ひとりの市民の「心と手足」こそがリアルにこの世界を創造して行く。

そして怒り、憎しみ、悲しみ、絶望、無力感、無関心、強欲などを超えていける力は、喜び、楽しさ、美しさ、感動、愛だ。

だからこの美しい里山で、おもしろいこと、おいしいこと、たのしいこと、うれしいこと、しあわせなことをみんなでやり続けよう。その輪が広がり、素晴らしい未来につながることを願って。

また来月が楽しみだ!

林良樹

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鴨川地球生活楽校4月レポート」への8件のフィードバック

  1. 大変興味深く全文を一気に読みました。キッチンガーデンいいですねぇ。本格的でないけれど我が家の狭い庭でも試みてみます。

  2. 素晴らしいです。一言一言大切に読ませていただきました。心がゆったりと気持ち良くなりました。私の住む大分県にも素晴らしい里山があり、自給自足の暮らしを求めて若者達が集まってきています。私は助産師で自宅出産を仕事にしているので、そのような素晴らしい若者達のお産に立ち合わせていただき、新しい生命の瞬間に日々感動しています。私は大分市内の街中に暮らしていますが、いつかは里山で暮らしたいと思っています。またブログ楽しみにしています。ありがとうございました。

    • 戸高さま
      ブログを読んで頂きありがとうございます。
      助産師をされていらっしゃるのですね。僕の2人の子供も自宅出産でした。
      僕の人生の中であんなに感動した体験は他にありません。とても尊いお仕事ですね。ありがとうございます。
      林良樹

  3. 楽しそう!
    飛んで遊びに行きたい気持ちでいっぱいになりました。
    和歌山の奥熊野、色川地域の人里離れた山の中の一軒家、みんなに蟻地獄とか奈落の底とか呼ばれる桃源郷での暮らしをもうすぐ始めます。
    ここ色川では、猪、鹿、猿はもちろん、兎、狸、アライグマ、貂などなどいろんな動物が田畑をレストランにしていて、人間は彼らのためのシェフといった勢いです。
    目先の利益に溺れて杉の植林をしたしまくった人間たちの招いたこと。
    でもその価値観を経たからこそ、いま多くの人たちがたくさんの気づきを得ている面もあるのですよね。
    自分の代で自分の望む世界が来るとは思わない、三代先を見据えて七代先がかわればいい、そのために望む世界の種をまきたい、いろんなモンダイを考えるときにいつもそう思うことなのですが、この植林・獣害のモンダイにもそんな気持ちで臨んでいます。
    大好きな竹が猪・鹿に食べられてしまい資源として使えないのが残念。
    バンブーファクトリーで遊ばせてもらっていたときとは大違い!
    どうやって現金を得るかは、これから生活していくなかで見出していきます。
    ヘタレ女がひとりこんなところで生きていく、それ自身がわたしの望む「仲間の増殖」につながっていくこともあればうれしいです。
    小さな輪がどんどんひろがって世界を覆い尽くすときを祈りながら。

    • 大越さん
      日本の森や里山、そして農村は今、ボロボロですよね。
      でもその価値を再創造し、その宝を活かすことを
      僕たちの世代から、今ここから始めればいいと僕も思っています。
      誰かが、いつかなんとかしてくれるだろう的思考が原発社会日本をつくってしまった。
      だから、僕らから始めよう。
      小さくてもいいから、一歩を前に出そう。
      世界は変えられる。
      ありがとう。
      林良樹

  4. 農もコミュニティもダンスパーティも音楽パーティもファッションもある鴨川ってだめですか?
    十代の若者でも都会にいく理由がなくなるように。

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