鴨川地球生活楽校12月「火」〜土のマリア〜

鴨川地球生活楽校 12月「火」〜土のマリア〜

今回は火がテーマだ。

人類は火を手にした時から文明が始まった。

火は食生活を変え、信仰が生まれ、道具が発明され、農業を発展させ、文明は飛躍し、メソポタミア・エジプト・インダス・黄河の四大文明が生まれた。そして増えた人口を養うため農業を拡大し、森を切り尽くしたため砂漠化し、古代文明は全て滅んだ。そして、工業時代の現代文明は石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の使用が増加し、地球温暖化を招き、さらに人類は原子力という新しい火を手に入れ、放射能汚染という最悪な事態を起こしてしまった。再び、火の扱いによってこの文明も滅びへと向かっているのは、歴史を見れば明らかだ。

広島・長崎、チェルノブイリ、311を経験した人類は、再び文明のターニングポイントに立っている。

これから、どちらへ向かうのか?

また滅ぶのか?

それとも、自然と調和した文明を築くことが出来るのか?

僕たち人類は、今まさに問われている。

太陽のエネルギーを一番蓄えているのが森だ。

その森の資源を、枯渇させることなく上手に使い、森と共に生きる文明をかつて日本列島に暮していた民族、アイヌ、琉球など縄文の民は持っていた。そしてアボリジニ、ネイティブアメリカン、エスキモー、インディオ等々、それは世界中の先住民族に共通する精神文化でもある。

そして、日本の農山村にはその循環の知恵がまだかろうじて残っている。僕らは、その伝統的な里山の知恵と現代の新しい知恵を融合させ、21世紀型の自然と調和したオリジナルな文化を創造することが出来る。

それは僕らのジェネレーションの人類的ミッションであると、僕は思っている。

今回12月の地球生活楽校のワークショップは古民家の土間にロケットストーブを設置し、炭焼き小屋を訪ね、村の長老たちに里山の知恵を学び、かまどでごはんを炊くことだ。

ペチカ、オンドル、暖炉、いろり等々、古今東西様々なストーブがあるが、薪ストーブに比べると1/6の薪で済むといわれているスーパー燃費のロケットストーブはアフリカを支援していたNGOが、木の少ないアフリカで最小限の薪で最大限の熱効率を発揮するストーブを開発したのが始まりで、その歴史はまだ浅く20年位だと言う。日本には薪ストーブ文化がないので、効率の良い薪ストーブは輸入もしくは特注となり、工事費を含めると100万円を超えてしまうが、ロケットストーブはドラム缶、耐火レンガ、石、割れた瓦、田んぼの泥、砂、わら、籾殻、配管等、ほとんど廃材で出来るのが魅力的だ。フィルはストーブルネッサンスだよ、ロケットストーブは!と少し興奮気味に僕に話してくれた。インターネットの時代の今、ストーブマニア達は国境と文化を超えて、情報交換し、日々進化しているようだ。ペチカ、オンドル、薪ストーブ、アースオーブン、ロケットストーブ等々、それぞれの良いところをミックスさせた新型ロケットストーブがこれから世界中で現れて来るだろう。

フィルがつくってくれた設計図に合わせ、イソライトという軽量耐火レンガでヒートライザーと呼ばれる燃焼室をみんなで組んだところで初日は時間切れとなった。

田んぼの土を軽トラで運びました

田んぼの土を軽トラで運びました

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ヒートライザー

ヒートライザー

翌朝一番で、炭焼き小屋へ行き、長老達に炭焼きのお話を伺った。平成11年から始めた炭焼きは今年で14年目だ。きんざさんは現在85才なので、71才から新しいことを始めたことになる。そして棚田オーナー制は今年で5年目くらいだから、80才で始めたことになる。炭焼きの長老たちはいつも凄いバイタリティだ。僕もぜひ、見習いたい。

この窯は昔の炭窯ではなく、新しく改良した炭窯なので10年以上も保ったが、そろそろガタが来ているので大きな修理が必要だが、俺たちもそろそろガタが来ているので、跡継ぎもいないし、窯が壊れたらもう終わりにしようと思っていると寂しそうに長老は話してくれた。

僕は思わず、「僕らが引き継ぎます!」と言っていた。

「今年は炭焼きをマスターするため、一週間合宿をして山からの木の切り出しから、運搬、そして窯出し、窯入れ、製品づくりまで全行程を通して学びます!」と僕は答えていた。う〜ん、これは僕が言っているのではなく、僕の意思を超えて僕の魂が言っているのだ。この文化と知恵を引き継げと、僕の魂が叫んでいる!よし、今年はやるぞ!炭焼きを!と、僕は一人で燃えるのであった。

炭焼き見学後、土間に戻ってロケットストーブの続きに取りかかった。直子さんと、かとちゃんがグラインダーで磨いてくれたドラム缶をヒートライザーに被せ、配管を横につなげ、その配管を土間の端から端まで往復10mも横に伸ばした。

かとちゃんがドラム缶を磨いてます

かとちゃんがドラム缶を磨いてます

その横に伸ばした配管の上に、コブ(泥と砂を混ぜた粘土)を盛ってベンチにするのだ。泥は僕の田んぼへ行って軽トラに積んで運んで来た。この辺りの田んぼの土は重粘土質なので、コブづくりには適している。そしてシートの上で砂と泥とわらを混ぜ合わせ、みんなで踊りながら踏込み込んだ。北海道在住で友人のアフロキューバンパーカッションのユニット「ンダナ」の曲をかけ、楽しいコブパーティが始まった!う〜ん、変な宗教に間違われそうな光景だ・・・!(笑)

お昼前になると、かまどのごはん炊きに、長老のきんざさんとこんぴらさん、じいたさんが来てくれた。僕が以前、一人で炊いた時は大失敗で、お釜の蓋を開けると中はおかゆで下は真っ黒にコゲていた!「始めちょろちょろ、なかぱっぱ、赤子が泣いても蓋とるな」と昔から言うが、かまどでのごはん炊きにもコツがいるのだ。

長老たちは確かこんな感じだったペよ〜と言いながら、細い薪をくべ始めた。そしてグツグツと煮え出さしたら、薪を抜いて後はおき火でゆっくりと弱火で炊いて約30分、その後10分蒸らすと、見事大成功!さすがです。おいしくふっくらと炊けたごはんがお釜の中でピカピカに光っていました。お釜の底の少し焦げた部分は醤油をさっとたらし、おにぎりを握ると焼きおにぎりになって、これがうまいんだよな〜と長老のみんなは口を揃えて力説していた。そして、かまどで炊いたごはんを直子さん、ゆうかちゃん、ゆうちゃん、美穂ちゃんの鴨川おにぎりガールズ達がおにぎりを握ってくれた。お昼ご飯は、その美味しいおにぎりをみんなでほうばった。

午後も引き続き配管し、コブをつくり続けたが、夕方も押し迫り、とうとう時間切れとなってしまった。まるでウルトラマン(古い?)みたいだけど、みんなが東京に帰る時間だ。土間は泥んこまみれとなり、壁は煙突用の穴がぽっかり空いたままで、まだ配管がむき出しで、まさに工事中という状態で、我が家は正月を迎えなければならないという状況になった・・・。

ヒートラザーにドラム缶を被せます。

ヒートラザーにドラム缶をつなげます。

土間に配管します

土間に配管します

この土間の惨状をみたどらちゃんが、このままじゃあまりにも忍びないので、来年早々ロケットストーブを仕上げる補講をやろうと呼びかけてくれた。

そして、その後Facebookのやり取りで翌年1/12(土)〜13(日)にロケットストーブの仕上げをやることになった。

そして、正月開け地球生活楽校のメンバー(どらちゃん、源ちゃん、すぎさん、みりちゃん、なおこさん、ともくん、たかちゃん、みさこさん、岩田さん、美穂ちゃん)のみならず、安房マネーの仲間である天然村のおもちゃん、シュガソルカフェのトムさん、白浜のわかさん親子、木村さん親子の他、NPOエコフの阿久津君と友人のモモチや、中央大学4年生の三上君(なんと僕を卒論のテーマに書こうとしている彼は、ミッキーと早々どらちゃんにあだ名をつけられたナイスガイ)等々、新しいメンバーも加わり、とうとう4日間延べ人数73名でロケットストーブを完成させた!

古民家の土間にクジラのようにどっしりと横たわった存在感のある土と鉄の巨大なかたまりは、姿に似合わず「マリア」と命名された。なぜ、マリアなのかはさっぱりわからないが、天然村のおもちゃんが名付け親だと言う。このミスマッチ感が何とも言えず、不思議な感情を沸き立て、このロケットストーブはみんなからマリア!マリア!と呼ばれ愛されていた。

ゴウゴウと火を燃やすマリアは、まるでドラゴンのように薪を喰らい、出来立ての大きな身体を、薪を燃やす熱で温めていた。

燃えるマリアを見て、僕はバチカンのサンピエトロ寺院でみたミケランジェロの傑作キリストを抱くマリア像「ピエタ」を思い出した。まるでマリアの息づかいが聴こえて来そうなほど、マリアのやわらかなその表情は大理石という鉱物を越え、生々しく生命が宿っていた。それは西洋の文脈から産まれた「石のマリア」だ。ミケランジェロは「慈悲を表現する」ため、石に命を吹き込んだ。一方、この里山にある古民家の土間に出現した東洋の「土のマリア」はプリミティブな美しさをたたえ、まるでピカソが表現したアフリカ的な美があり、また縄文的な土着的な宇宙感がある。火とはエロスであり、力であり、美であり、神秘であり、魔法であり、シャーマニックな力のシンボルだ。

21世紀、僕らは「慈悲を表現する」ため、火を内に秘めた「土のマリア」をつくりあげたのだ。

僕らは今、再び原始の火へと戻る。

しかし、それは過去の火の文化ではなく、新しい火の文化なのだ。

「土のマリア」は、森と調和する人類の新しい文明、新しい女性性の時代をあらわすシンボルだ。

かつて何度も滅んできた文明と同じ道を歩まないために、僕らは「土のマリア」と共に歩んで行こう。

完成したロケットストーブのマリア!

完成したロケットストーブのマリア!

鴨川地球生活楽校12月「火」〜土のマリア〜」への3件のフィードバック

  1. 土のマリア、良いネーミングじゃないですか。相変わらず素晴らしい文章です。鴨川すごい! 感動しました。土のマリア見てみたいです。

  2. 素晴らしいですねぇ~!土のマリアと共に歩み、かつての縄文人の様に21世紀型[[邪馬台国民生活]]に賛同します。(^_^)(^_^)(^_^)

大谷秀美 への返信 コメントをキャンセル